
経済産業省が行う調査の一つに、「第3次産業活動指数」があります。小売業のほか、物流あるいは運輸業、宿泊および飲食サービス業など、第3次産業に属する業種の生産活動を総合的に捉えることを目的とした指数で、歯科医院も医療・福祉の医療業に属し、病院・一般診療所とともに歯科診療所として独立した指数で捉えられています。第3次産業に含まれる業種の各活動を、統一的な尺度でみることができる資料であり、内閣府の景気動向指数や月例経済報告にも活用されるなど、景気動向を捉える指数として毎月15日前後に発表されています。
調査は5年ごとに基準年を変え、その後10年を一括りとして指数の推移を捉えており、現在は2015年を基準年とした指数が発表されています。最新の2024年10月分の指数をみますと、歯科医院は2015年の基準年を100として124.9となっています。第3次産業全体の指数では102.3、前月比0.3%上昇となって3カ月ぶりに上昇する状況ですが、医療福祉は指数上昇に寄与した業種のトップとして前月比2.5%の伸びを見せています。
各業種の指数の大きさを見ると、情報通信業におけるソフトウェア開発などでは140を超え、また、キャッシュレスの普及に伴いクレジットカード業などの金融に関しては190を超え200に迫る業種がある一方、同じ情報通信業でも新聞業55.4、出版業56.0など、約半数にまで数値を下げている業種もあります。ほんの10年のくくりの中でも、人々の生活スタイルや価値観の変化によって大きな動きが見て取れる状況です。そうした中、歯科医院の指数は、新型コロナウイルス禍における2020年5月の全業種平均の指数が、86.7へともっとも下がった際にも91.7に留まり、そこから比較的早期に回復した上で現在の指数を維持するなど、非常に堅調な推移を見せているといえるでしょう。こうした動きは、歯科医院だけでなく病院・一般診療所や保健衛生、社会福祉・介護事業などにもみられる状況です。
統計資料はあくまでも全体の動きを把握するものですから、個々の動きを見れば細かな業績の良し悪しが存在することではありますが、しかし、歯科医療全体として産業活動の上下変動が少ないということは、経営を進めるにあたっての資金計画や設備投資計画が立てやすいということでもあります。ある地方銀行では、コロナ禍以降の融資返済が進む状況において、その返済状況などからシビアに融資先を選別しているようです。継続的に設備の更新やリニューアルを行う歯科医院の業績と、経営資金を適切に活用できていない歯科医院の業績とを比較分析し、融資基準に変化をつける対応を行っているようです。時の経過とともに生活スタイルや価値観が変化したとしても、着実な経営を行い、患者獲得・収入確保に向けて歯科医院のメンテナンスを継続することにより、10年間で2割以上も活動が伸びることをデータは示していると思います。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏