働く環境を良好に維持するうえで重要となるのが、働く者同士の活発なコミュニケーションであり、また、組織内において円滑な人間関係が築かれているかが、ほとんどを占めるといっても過言ではありません。それがうまくいかず、医院のためにと思って、強い責任感をもって院内の清掃や片付けのチェック、あるいは業務の補助や指導を率先して行っていたつもりが、いつの間にか1対多の構図となって一人孤立してしまうことは、スタッフを比較的多く抱える職場(他業種含めて)ではいつでも起こり得ることでしょう。そのとき、「多」側の意見としては、指導されている口調が怖くて言い返せなかった、とても意見をできる雰囲気ではない、といったことが多くみられますが、何か歪みが生じた場合に、双方にハラスメントの要素を含んでいないかどうかに注意する必要があります。

職場におけるハラスメントであるパワーハラスメントは、厚生労働省が定義するハラスメントの一つですが、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害される、と定義されており、①から③までの3つの要素を全て満たすものをパワーハラスメントとしています(厚生労働省:あかるい職場応援団ホームページより)。業務上で行われる指示や指導などについては、必要な範囲を超えなければパワーハラスメントには該当しないということになりますが、ハラスメントとつく内容のものを挙げていくと、日本ハラスメント協会などによると、実に40以上の数多くの種類が存在しています。パワハラやセクハラ、モラハラなどは代表的なものとして多くの人に認知をされていますが、他人とコミュニケーションをとることが苦手な人に、必要以上にコミュニケーションを取ろうとする行為をコミュハラと言ったり、特定の人だけにお菓子を分けないなどをお菓子ハラスメントと言ったりするなど、普段のあらゆる場面での内容が挙げられています。

注意すべきは、いずれの内容もそれを強要することや、嫌がらせをすることなどをハラスメントしていますから、明らかに悪意を伴っているもの、あるいは意図して行われているものかどうかという点です。ハラスメントに対するハラスメントとしてハラハラ(逆ハラ)という言葉もあるようですが、先の1対多の構図でみると、多の方に意図的あるいは故意に行なわれた行動が伴うものでないかどうかは注視しておく必要があります。

コミュニケーションが良好な職場では、上司、部下、同僚のどの関係に関わらず、お互いを尊重する文化を持ち合わせています。周囲からの信頼が厚い人は、例外なく人(相手)の話にしっかりと耳を傾けていますし、どれほど忙しく業務に追われている状況でも、話を聞くときには手を止め、相手の方に体を向け、顔や視線も同じく相手に向けて話を聞こうとする姿勢が見られます。お互いに向き合おうとする姿勢が、人間関係をよいものにするポイントですが、その心がけができるほんの少しの余裕を持っておきたいものです。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏