
令和6年7月26日に、厚生労働省から令和5年簡易生命表が公表されました。生命表とはつまり国民の「平均寿命」を算定した資料であり、その資料によれば男性81.09年、女性は87.14年となりました。簡易生命表は推計人口による日本人人口、人口動態統計(概数)をもとに毎年公表され、国勢調査による確定数を使用した日本人人口、人口動態統計をもとにした資料は完全生命表として5年ごと(次回公表は令和9年)に公表されています。新型コロナウイルスの影響などにより一旦は平均寿命が下がりましたが、令和4年から5年にかけて再び寿命が延びる結果となりました。
平均寿命とともに「健康寿命」についても延びてきており、こちらは2019年(令和元年)が最新ですが、男性72.68歳、女性75.38歳となっています。健康寿命とは「日常生活に制限のない期間の平均」であり、健康寿命の調査資料がある2019年までは平均寿命と健康寿命の差が徐々に短くなっているのが現状です。厚生労働省の調査事業補助金を受けて行われた資料によると、2040年の健康寿命の上位予測値は男性では77歳を超え、女性では79歳を超えるとみられており、今後ますます健康に歳を重ねる人が増えることが予想されています。
現在、日本の人口は減少してきておりますが、高齢でも元気な人の割合が今後増え続けることにより、これまでにない新たな需要や要望が顕在化することになるでしょう。医師・歯科医師・薬剤師調査では、令和2年から4年にかけて歯科医師数および人口10万人に対する歯科医師数ともに減少に転じています。年齢階層別にみますと数字の上では60~69歳、70歳以上の歯科医師数は増加している状況ですが、歯科医院の現状では、70歳~75歳ぐらいの間で後継者や事業譲渡により診療の一線から退く院長が多くみられる印象ですから、今後は診療を続ける現役歯科医師の先生方への期待や需要がますます高まるものと考えられます。
現在、歯科医院で標榜可能な科目は歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科ですが、インプラントや訪問歯科診療、CAD/CAMのほか、マイクロスコープによる精密診療や審美治療など1軒の歯科医院で実に多岐に亘る治療対応をされています。今後、平均寿命や健康寿命の延伸により、さらに歯科医療への需要が高まりますと、歯科医師および歯科医院が対応する領域もますます多岐に亘るのではないでしょうか。歯科医院の特長を打ち出す取り組みが強くなる一方、各専門分野との連携がより強化されるかもしれません。様々な業態の飲食店が、元を辿れば一つの運営母体が統轄して経営を行っている例は多いですが、歯科医院においても大手医療法人によりあらゆる専門分野の歯科医院をグループに揃えて幅広く展開することが増えるでしょう。また個人診療所においても、立地周辺における各歯科医院の専門分野を意識した自医院の取組みが不可欠です。専門性を限りなく高めた歯科医院、幅広い診療内容に対応する歯科医院など多種多様のさまざまな取り組みが、患者さんの価値観や需要の広がりに応えることになり、これからもますます歯科医療が発展することを確信しています。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏