(1)概要

個人から財産を無償でもらったときは、原則として贈与税の課税対象となります。贈与税が課税される理由の一つとして、贈与税は相続税の補完税としての性質があるためです。すなわち、贈与税が課税されない場合には、生前に財産を贈与することにより相続税の課税を回避することが可能となります。このような贈与税について、課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、申告と納税は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行う必要があります。今回は贈与税の「暦年課税」についてご説明します。

(2)贈与税の課税対象

①贈与税の課税対象となるもの
現金や預金などの金銭・土地・家屋・有価証券・保険料を負担した者以外の者が受け取った保険金・債務の免除など

②贈与税の課税対象とならないもの
・扶養義務者相互間で教育費や生活費に充てるために贈与を受けた財産で通常必要と認められる範囲内のもの
・法人から贈与により財産を取得した場合(所得税が課税されます) など

(3)暦年課税の税率と基礎控除額

「暦年課税」は1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額に対して、10%~55%の税額が課税されます。贈与を受けた財産の価額が110万円以下であれば贈与税は課税されず、申告も必要ありません。

(4)相続があった場合

相続により財産を取得した者が、その相続開始前7年以内(改正前は3年以内)にその相続に係る被相続人から暦年贈与により財産を取得した場合には、一部例外を除き、その贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算する必要があります。ただし、延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円まで加算されません。その際、既に納付した贈与税相当額を相続税額から控除します。なお、控除しきれない金額は還付されません。

(5)加算対象期間について

令和6年税制改正による贈与財産の加算については、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。具体的な贈与の時期等と加算対象期間は次のとおりです。

贈与の時期贈与者の相続開始日加算対象期間
令和5年12月31日まで相続開始前3年間
令和6年1月1日以降令和6年1月1日~令和8年12月31日相続開始前3年間
令和9年1月1日~令和12年12月31日令和6年1月1日から相続開始日
令和13年1月1日~相続開始前7年間

(6)注意点等

①贈与は「あげます」「もらいます」といった、あげる人と、もらう人の意思表示があって初めて成立する契約(民法549条)となります。そのため、相手方に無断で行った行為は贈与があったと認められません。例えば、祖父が孫のために無断で孫名義の預金を作った場合はいわゆる「名義預金」となり、孫への贈与があったとは認められず、相続があった場合には祖父の財産として相続の対象となります。

②「暦年課税」と「相続時精算課税」について、贈与を受けた者は、贈与をした者ごとに、それぞれの課税方法を選択できます。したがって、複数の者から贈与を受けた場合は課税方法として2つの方法を併用可能な場合があります。

③財産をもらった場合でも「住宅取得等資金の贈与」や「贈与税の配偶者控除」など一定の場合には贈与税が課税されません。(申告は必要となります)

④贈与税については、財産を贈与した者と贈与を受けた者との間で連帯納付の義務があります。


税理士法人 和田タックスブレイン 代表税理士
髙田 幸史 先生