(1)概要

人手不足とされる昨今、給与面のみではなく働きやすさや休日数など多方面に配慮した労働環境の整備が不可欠となっています。その中でも社宅(社員寮)は家賃負担の軽減という意味で従業員にとって経済的なメリットが大きい福利厚生の一つで、求人を行う際のアピールポイントにもなります。また、医療法人で理事の社宅を準備するケースもあります。そこで本稿では、社宅の税務上の取り扱いについてご説明します。

(2)賃貸料相当額の計算

社宅の税務上の取り扱いの前提として、月額の賃貸料相当額を計算する必要があります。賃貸料相当額は賃貸しようとする土地と建物の固定資産税の課税標準額から求めた次の金額の合計により計算します。一般的には通常の賃貸物件の家賃より安くなるケースが多くなります。

  1. 建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
  2. 12円×(建物の総床面積÷3.3㎡)
  3. 土地の固定資産税の課税標準額×0.22%

(3)従業員等の税務上の取り扱い

従業員等は社宅を利用することで経済的なメリット(経済的利益)があります。従業員等が雇用者(個人事業主や法人等)から受ける経済的利益については、基本的には雇用者からの給与として課税されます。しかし、社宅については一定の条件を満たせば課税されません。具体的な取り扱いは次の通りです。

  1. 賃貸料相当額の50%以上を賃料として社宅を利用させる場合
    利用者側は給与課税されません。
  2. 賃貸料相当額より低額で社宅を利用させる場合
    利用者から収受した賃貸料と賃貸料相当額の差額に対して、利用者の所得の計算上、給与として課税されます。
  3. 無償で社宅を利用させる場合
    賃貸料相当額が給与として課税されます。
  4. 豪華な社宅について
    豪華な社宅の場合には上述した賃貸料相当額の計算は行わず、一定の方法により計算した通常支払うべき使用料相当額が賃貸料相当額となります。豪華な社宅かどうかの明確な判断基準はありませんが、床面積が240㎡超で社会通念上、一般的に社宅とされない住宅とされています。プールなど嗜好性の高い設備付きの社宅も豪華な社宅とされます。

(4)雇用者の税務上の取り扱い

従業員等のために社宅を用意した雇用者は、賃貸料は収入となり、社宅に係る費用を経費として計上できます。具体的な取り扱いとしては、次の通りです。

  1. 雇用者が所有する社宅を従業員に賃貸した場合
    雇用者が従業員より収受した賃貸料は個人事業主の場合は不動産所得、法人の場合は収入となります。社宅に係る維持費用や固定資産税、減価償却費等は経費となります。
  2. 雇用者が他の者から社宅を借り上げて従業員に賃貸した場合
    雇用者が従業員より収受した賃貸料は①と同様です。借り上げのために支払った家賃は経費となります。

(5)注意点等

  1. 現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担は全額給与課税となります。
  2. 社宅に付随する駐車場については通常の賃貸料相当額に含まれていない場合は上記のルールは適用されません。
  3. 役員に社宅を貸与する場合は取り扱いが異なります。