(1)概要

個人事業主のクリニックや医療法人などの確定申告を行う場合、多くは税務署長の承認を受けて青色申告が行われています。青色申告は適正な納税申告を奨励するための制度であり、青色申告特別控除などの様々な特典があります。青色申告を行うためには、法令で定められた帳簿書類を備え付ける必要があります。そこで本稿では、帳簿書類の種類と保存期間について述べます。

(2)帳簿書類の種類

帳簿書類(帳簿及び書類)の種類について、所得税法施行規則63条1項では、次のように規定されています(なお、法人については法人税法施行規則59条1項で規定されています。)。

①第五十八条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告者の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿

棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類

③取引に関して相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

すなわち、帳簿書類とは事業に関連する全ての取引について生じた書類関係一式に加えて、それらの書類に基づいて作成された書類の全てを指します。原始資料に基づいて帳簿が作成されることにより、適正な納税申告を行うための基礎資料となり、正確な税金計算を行うことができます。

なお、例えば医療法では「医療法人は、厚生労働省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と規定されています(医療法50条の2)。会社法についても同様です(会社法432条)。医療法や会社法では、会計帳簿に加えて「その事業に関する重要な資料を保存しなければならない」と規定されていることから、上述の所得税法や法人税法より広範な書類を示します。

(3)帳簿書類の保存期間

帳簿書類の保存期間については、以下の通り各法令により異なる規定が設けられています。

法律保存期間根拠法令
法人税法確定申告書の提出期限の翌日から7年(注1)法人税法施行規則59条1項
所得税法確定申告書の提出期限の翌日から7年所得税法施行規則63条1項
消費税法確定申告書の提出期限の翌日から7年消費税法施行令50条1項
医療法会計帳簿の閉鎖の時から10年(注2)医療法50条の2
会社法会計帳簿の閉鎖の時から10年会社法432条

(注1)
青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、保存期間は7年ではなく10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)となります。
(注2)
会計帳簿の閉鎖の日とは、当該事業年度終了の日を言います。
*実務においては、7年の保存期間と規定されている法律があるものの、最も保存期間の長い10年の保存期間に合わせることが慣例となります。


税理士法人 和田タックスブレイン 代表税理士
髙田 幸史 先生