厚生労働省は、今年度の最低賃金を検討するにあたり第68回中央最低賃金審議会の開催案内を発表しました。毎年10月に行なわれる最低賃金の見直しですが、6月下旬から7月下旬にかけて大学教授などの公益代表、労働組合連合会などの労働者側、商工会議所・日本経済団体連合会(経団連)・一般企業などの使用者側との3者により構成される中央最低賃金審議会の審議により引き上げ額の目安を決定します。その決定に基づき、各都道府県による地方最低賃金審議会での審議を経て、各都道府県労働局長により決定され10月から発効される流れとなります。
昨年の最低賃金は全国加重平均額で1,004円となり、初めて1,000円を超える金額となりましたが、金額では前年比+43円、引上げ率は+4.5%もの高い水準になりました。政府は、最低賃金の目標を2030年代半ばには1,500円にするとしていますから、今年度は、大企業を中心とした4月の大幅な昇給等もあり、昨年に引き続き大きな見直しが予想されているところです。時給1,004円の水準は、月労働時間数を173時間とすると17万円台半ばの月給ですが、政府が目指す1,500円の水準というのは月給換算では26万円前後になるということです。毎年4~5%前後の昇給が難しい歯科医院においては、最低賃金の引上げが急速なペースで続くとすれば、いずれ追い付かれてしまうことになります。
そのために今後歯科医院が取り得る対策としては、早い段階から労働効率の向上を図ることに焦点を当てることが急務といえるのではないでしょうか。つまり、いずれ必要となる人件費の単価引き上げに備えて、スタッフ一人一人の業務内容の見直しを行い、効率を高めて対応するということです。日々の業務を遂行する上で大切なことは、ミスを防ぐためのチェックなど業務にモレがないように取り組むことですが、一方で、複数の職種で同じことを行ってしまう業務のダブりや、本来は行わなくてもよい無駄な業務を削減することはより大きなポイントです。複数のスタッフが同じ商品の在庫を確認・発注している、デジタルツールで管理・集計できるデータを手書きで集計している、担当を決めていないことにより業務が遅延しているといったことなどは、無駄な人件費が2重にも3重にもかかっていることになるのです。
スタッフからすると、業務の見直しにより今の作業がなくなるとなれば、自分の存在意義や役割を失うことのように思えて一時的に不安を抱くことがあるかもしれません。しかし、適正な人員で最大限の効率化を図るために、それは本当に必要な業務なのか、業務の整理によってより付加価値の高い業務が可能になるのではないかという広い視点を、院長だけでなくスタッフを含めた医院全体で持つことが重要と考えます。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏