内閣官房に設置されている「新しい資本主義実現本部」での会議資料において、国立長寿医療センターが発表した資料を基にした【社会とのつながり方の種類数と認知症発症リスクとの関係】という資料によりますと、社会とのつながりがまったくないか、またはつながりが1種類の場合の発症リスクを100とした場合、5種類のつながりを持つ人の認知症発症リスクは54%に低減されるということです。
5種類のつながりとは、「配偶者がいる」「同居家族と支援のやりとりがある」「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」「何らかの就労をしている」というものであり、調査内容は、2003年に要介護認定非該当であった男女約14,000名を対象に、その後の認知症を伴う要介護発生状況を10年間追跡したデータを解析したものだそうです。それぞれ、2種類のつながりを持つ人の認知症発症リスクは86%、3種類75%、4種類65%、そして先述の5種類のつながりを持つ人が54%と、社会とのつながりの数の多さに伴って認知症発症リスクは低減するという調査結果が示されています。
企業においては定年年齢が徐々に上がり、労働力確保に加えて若年者の社会保障費などの負担を少しでも和らげるために、70歳まで働き続けられる社会の実現に向けて政府はさまざまな制度改革等を行っているところです。また、実際の身近な生活者の実情を見ましても、60歳で定年を迎えたのちは、顧問や子会社への出向等で65歳前後まで働く人が多く見られるほか、現役時代に築いた友人関係を大切にしてゴルフなどスポーツ三昧の日々を送る大手企業元常務、退職者を集めそれぞれが持つ知識やノウハウを持ち寄って新たな事業を興そうと張り切る電器業界元専務、古民家を改装して広いリビングダイニングを作り、自ら作る手料理を友人に振舞う弁護士など、いつまでも社会とのつながりを大切にしようとする方は精力的に活動をする印象があります。元経営者や専門家でなくとも、定年後にベンチャー企業の門を叩き、培った人脈を生かしてもう一旗揚げようとする元管理職も毎日を充実して過ごしています。
昨今、そろそろ事業承継や事業売却をしようかとおっしゃる歯科医院院長と話す機会が増えてまいりましたが、お話をするときに切に願うことは社会とのつながりを持ち続けてほしいということです。そのために細々とでもよいので診療を継続することはできないか、地域のコミュニティーの場所として歯科医院を存続させることはできないかと持ち掛けることもあります。高齢になった患者さんが最後まで信頼して通い続けられる医院であってほしいと望むと同時に、仕事(診療)に没頭してきた長い年月が途切れた時に、虚無感に苛まれることがないようにと願うばかりです。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏