2月15日に内閣府から発表された2023年10月~12月期の国内総生産(GDP)の速報では、名目GDPはおよそ591.5兆円(内閣府HP)となり、ドイツに抜かれ世界第4位に下がったとの報道がありました。国内総生産は、一年間など一定期間内に生み出された価値の総額を表しますが、日本の人口約1億2,409万人(総務省統計局)に対して、ドイツの人口が約8,482万人(外務省HP)と日本の約7割の人口のため、一人あたりのGDPで考えると1.5倍ほど開きがあることになります。実際、日本の一人あたりGDPは世界では30位前後、G7の中でも最下位となるなど、依然として生産性が高くならない状況が続いているようです。

ある専門家は、日本は長年コスト削減ばかりを行い、投資などの積極的な経営をしてこなかったからだとの分析を行っています。弊社が毎年行う収支アンケート調査において経営効率を見た場合でも、収入規模が大きい歯科医院、つまり設備投資の資金を多く確保できる歯科医院ほど生産性が高くなる傾向があります。たとえば、スタッフ一人あたりの月間収入額においては、平均は約131万円となっておりますが、小規模歯科医院においては約106万円に対して大規模歯科医院では約144万円まで、収入規模に比例して高くなる傾向があります。チェアー一台あたりの月額収入においても収入規模に比例しており、小規模歯科医院の平均約54万円から、大規模歯科医院の約220万円まで実に4倍の開きが出る傾向があります。

現在、コロナ禍に行なわれた無利息融資の返済が始まってきておりますが、銀行担当者によると、利払いが始まる直前に借入れた資金をそのまま一括で返済をする事業所は多いそうです。銀行としては十分に想定された動きのようですが、一方で銀行も融資残高を維持するためにプロパーでの融資に力を入れている様子です。つまり歯科医院にとっては、より有利に融資を受けられる状況でもありますから、新たなチェアーの増設や更新、あるいはCTやマイクロスコープなど、高額になる新規の設備導入について積極的に検討できる環境と捉えることができます。

歯科医院の損益について数年間に亘る推移を見ていますと、設備投資等によって経費の金額が多少増えたとしても、積極的な経営を推し進めることにより経費の増加分を上回る収入を得られるようになり、収入に対する利益(所得)率が上がる歯科医院が多くみられます。物価が上がることで各経費項目にも影響があるため、全体の経費管理が非常に難しい経営環境ではありますが、積極的な取り組みが歯科医院の経営を安定させ、医院の経営安全率を高めることにもつながります。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏