外務省が発表する海外在留邦人数調査統計によると、海外に居住の地を移し永住する人が増えているようです。海外に在住する邦人数は、コロナ前2019年の1,410千人をピークに、2023年度には1,293千人まで減少しているためコロナ前の水準に戻らない状況ですが、そのうちの永住者数はコロナ禍前からも年々増加し続けており、2023年には574千人を記録しています。海外在留邦人に占める永住者の割合は、2013年の33.2%から2023年は44.4%と10年間で10ポイント以上も増加している状況です。年齢や性別の構成は発表されてはおりませんが、ここでの永住者とは、3か月以上海外に在住し当該在留国から永住権を認められ生活の拠点を日本から海外へ移した人のことを指します。

一方、法務省出入国管理庁が発表する2023年末の在留外国人は3,419千人で、過去最高を更新しているそうです。そのうちの永住者の数は年々増加の一途を辿っており約891千人となっています。前年から比較すると約3.2%、人数にして約27,600人の増加です。技能実習生や留学生なども含めた在留外国人数は、コロナの影響を受けた2020年から2021年にかけて一旦減少したものの、その後増加に転じ現在の状況となっています。日本人の海外流出と外国人の日本流入が少しずつ進んでいるという状況です。

政府は2024年3月15日に、これまでの技能実習に代わる制度として「育成就労」の法案を国会に提出しました。これまでの技能実習は、日本の技術を発展途上国の外国人に教えることによって、その国や地域の経済発展に寄与することを目的としてつくられた制度ですが、育成就労では日本に定住して働き手となる外国人人材の確保を目的として制定を目指すものです。制度の詳細は今後検討が進められることになりますが、国内での深刻な労働力不足に対応するための要件を整備し、より長期的に日本に在留し労働できることを目指す制度となるようです。技能実習生としてなかなか増えない外国人労働者を、育成就労者として労働力を増やしていこうとする政府の強い意向の表れでしょう。

歯科医院では、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士は国家資格のため対象とはならず、また歯科助手、受付等の業種においても一般業種となることから、現段階では育成就労の対象職種とはならない状況ですが、諸外国との人材の交流がますます盛んになることが予想される中で、患者さんとしての外国人対応のみならず、スタッフとしての外国人対応等も視野に入れる時代がくるのかもしれません。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏