今回で連載3回目となるが、臨床のツボ後編について紹介してみたい。『治療計画なくして患者さんの満足はありえない』近ごろの患者さんは、いくら素晴らしい治療を行なったとしても、治療が患者さんの日常生活に支障をきたすようでは納得しない。それを繰り返すと患者さんが「早く終わってほしい」と訴えてくるのは当然である。「患者さんの日常生活に不都合がないように治療を行うこと」が最優先される項目であり、良い歯科医師の条件である。

「まず治療のゴールのイメージを固める」ゴールをイメージして治療に取り組まなくてはならない。行き当たりバッタリの治療では、治療時間も回数も多くかかる。ゴールをイメージできなければ段取りを組むこともできない。イメージさえ出来てしまえば、治療中にイメージと現実の誤差を埋めていく作業を行えばよいだけである。インターディシプナリーにも利点・欠点がある。欠点は責任の所在がはっきりしない点である!また、矯正治療を例にとれば、矯正に関する知識や技術を全く持ち合わせていない歯科医師が専門医に依頼をしても、おまかせになってしまう恐れがある。「インターディシプナリーの利点・欠点」を把握したうえで連携をする事が重要となるが、まずは自分を高めよう。1歯の治療から、隣在歯を含めたブロック治療、さらに全顎治療へと治療の範囲が広がるにつれ、治療計画は複雑になる。効率のよい治療計画を考える際には、まず、患者さんがどこまで希望しているのかを術者が把握することが重要となる。「患者さんの希望を理解して治療計画を立てる」ことは、スムーズに治療を進めていくカギである。また、全顎治療は局所治療の積み上げである。ただ、局所治療の完成度にとらわれて、時間・回数・手間・コストをかけすぎると、患者さんの満足は得られない。歯科治療はF1のピット作業と同じで、完成度と素早さが要求される。「治療の完成度を高くするのはあたり前」であり、そうしていても起こる経年劣化に対応していかねばならず『治療終了時からが本当の勝負!』である。

また、治療に対する患者さんの満足度がその後の信頼関係にも大きく影響することは言うまでもない。例えば、治療終了時に、患者さんがほんの少しだけ審美性や咬合に不満を抱いていそうな感があるとする。これでは何のために今まで、時間とお金をかけていただいたのかわからない。結果がすべてを物語る。患者さんが満足していないようであれば迷わず治療のやりかえをすべし。「患者さんにとって治療結果がスベテ!」である。また、治療前に患者説明を行っても、治療結果を説明する歯科医師は少ないのではないだろうか?治療後、長期にわたるメインテナンスのなかで起こりうる可能性があるトラブルとその対応について、きちんと説明することが信頼を生む。「治療後の患者さんへの説明が実は重要!」である。
 
今回三回目の連載でほぼ半分50選の臨床のツボの話しをさせて頂いた。次回は勉強のツボ。開業のツボについて紹介させていただきたい。


北九州市開業
上田 秀朗 先生