
2024年2月まで続いた政策金利のマイナス金利は、2024年3月0.10%、2024年7月0.25%、2025年1月には0.50%まで上昇しており、今後の動きとしては夏ごろにはまた上昇するのではないかと予測されている状況です。政策金利の動きに合わせて、銀行の貸出金利に影響を与える短期プライムレートも上昇しています。短期プライムレートは政策金利の上昇を追いかける形で推移しますので、2024年9月に(この間の金利を削除しました)0.15%引き上げられた後(日銀HP最頻値参考)、都銀各行では2025年3月にもさらに0.25%の引き上げを行うことを発表しています。
短期プライムレートは、金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利を指し、各金融機関がそれぞれ決めるため一律ではありませんが、歯科医院など中小事業者が多く利用する地銀等においては、都銀が決定する短期プライムレートに追随する形で決められることが多いようです。短期間で段階的に引き上げられる金利に対して、変動金利での融資の場合はその都度影響を受けますが、3年固定金利などの固定金利での融資を利用している場合は、期間満了後の金利見直し時には、その間の引き上げ金利が一度に上乗せになる可能性があることに注意が必要です。
銀行が提示する貸出金利に影響を与える指標として、もう一つ「全銀協TIBOR(タイボー)」という金利があります。「東京銀行間取引金利(Tokyo Interbank Offered Rate)」の略で、銀行間で行われる取引に利用する金利といえますが、毎日公表されるTIBORをもとに、貸出先ごとに決定した金利をプラスして貸出金利とする方法が多くなっている現状です。TIBORに上乗せされる金利が、融資を受ける各事業所の経営体力に対する評価ともいえるでしょう。 私どもが毎年行う歯科医院の経営指標においては、70.8%の歯科医院でいくらかの融資を利用している実情であり、収入に対する借入金比率は平均75.5%となっています。金利水準としては固定金利の平均が0.76%、変動金利の平均が1.04%ですが、今後はいずれも上昇することが予想されるところです。金利が上昇することは、同時に金利を含めた返済余力を大きく保つ必要があるということです。人件費をはじめとしてあらゆるコストが上昇する局面において、収支バランスをより強く保つことは大変なことではありますが、必要なときに必要な額を借りられる体制を常に意識しておかなければなりません。水道光熱費や通信費、事務用品費など、スタッフとともに取り組むことができる経費削減により一層注力する一方、積極的に打って出るところは出て、患者さんの獲得および収入確保へ全力を注ぐ院長の取り組みが重要です。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏