
みなさま、こんにちは。株式会社シェルクレール代表歯科衛生士、佐藤朱美です。今年で歯科衛生士になって33年目を迎えます。この年月を振り返ると、本当にあっという間で、時の流れの速さに驚くばかりです。現在、私は臨床の現場に立ちながら、研修講師としてホワイトニングやデンタルエステティック、歯のメインテナンスの技術向上、さらにはチームビルディングや接遇マナーの指導も行っています。今回は「接遇マナー」をテーマに、私自身の経験を交えてお話ししたいと思います。
患者さんからのクレームの日々
今でこそ接遇マナー講師としての役割を担っていますが、私のキャリア初期は、患者さんからのクレームに悩まされる日々でした。当時の私は、歯科衛生士という資格に頼り切り、患者さんへの配慮を欠いた対応をしていたのです。
患者さんから「前回のあなたのクリーニングが痛かったから担当変えて!」と直球で言われたり、受付で「あの人感じ悪いから別の人に代わって」と指摘されたりしたことも一度や二度ではなく、何度も繰り返されました。そのたびに悔しくて涙する時も多々ありましたが、正直なところ、なぜそう言われるのか分からないままでした。
「あなたが付けてきた歯石を私が綺麗にしてあげているのに…」と、患者さんに対して心の中で反発するばかりで、患者さんの気持ちに寄り添う視点は皆無でした。当時の私は技術的にも未熟で、クリーニングは流れ作業のようになっていました。技術ももちろん「無」でした。そのことに気づけたのは、もっとずっと後のことです。
変わる社会と歯科医院のあり方
現在、日本には約68,000件の歯科医院があると言われています。その中で、毎年1日約5件の歯科医院が廃業し、新たに開業しています。最近では開業する歯科医院数が増えてきているそうです。選ばれるのが当たり前の時代となった今、歯科医院や歯科衛生士も、患者さんに「選ばれる存在」でなければ生き残れません。
私自身、この変化を痛感し、技術だけでなく「患者さんに寄り添う姿勢」を重視するようになりました。その結果、今では歯科大学や歯科衛生士専門学校などの教育機関や国内外の歯科医院において、「患者さんから選ばれる歯科医院・スタッフ」をテーマに接遇マナーをお伝えしています。
選ばれる存在になるために
患者さんから信頼され、選ばれる存在になるためには、「医療者と患者との信頼関係」を築くことが何より重要です。信頼関係を築くには、医院全体の総合力を高めることが必要不可欠です。つまり、スタッフ一人ひとりが「医院の顔」としての意識を持ち、おもてなしの心を大切にすることが求められるのです。
その第一歩として、私たちは来院される患者さんの期待や行動、心理をしっかり理解することが重要です。そして、信頼関係を構築するための「傾聴力」を磨くことが欠かせません。この傾聴力こそが、患者さんとの心の距離を縮める鍵なのです。
コラムを通じてお伝えしたいこと
今回のコラムでは、接遇マナーを通じて患者さんに選ばれる存在になるためのエッセンスをお届けしたいと思います。この内容は、開業前の準備段階から開業後の運営、さらにはプライベートの場面でも活用できるものです。
次回は、さらに具体的な取り組みについてお話しします。どうぞお楽しみに。
株式会社シェルクレール 代表取締役
佐藤 朱美 氏