新興国における、道路や電話網など、いわゆるインフラが十分に整備されていない地域において、先進国で採用されている技術やサービスを導入することにより、先進国を飛び越えて一気に経済発展をする状態をリープフロッグ現象と呼ぶそうです。通信網が整備されていないところから一気に普及したスマートフォンをはじめとして、ドローンを利用した医療品を輸送するサービスなども先進技術を利用したものです。

新興国における携帯電話の人口普及率を見ると80.8%、インターネットの人口普及率は25.1%となっています。日本では早くから携帯電話事業に取り組み、今では携帯電話の人口普及率は126.5%と高い状況ですが、長年に亘り積み重ねてきた技術、少しずつ改良を重ねながら発展してきた技術が十分に成熟したときに、誰もが利用しやすい技術となって他の地域で広く普及するということは、全体から見ればよいことかもしれません。(データは総務省 情報通信白書 平成29年版より)

しかしこうした一足飛びに発展する現象は、自然発生的に生れたものではなく、その場その地域にとって必要であり、その技術が持つ利便性が合致したからこその結果といえます。現在、世界でAIの技術が急速に発展する中で、国別AIランキングでは日本は12位(総務省 情報通信白書 令和6年版データより)とそれほど高い順位ではありません。むしろ、先を行く国々の後塵を拝しているといえます。しかし、今後AI技術が成熟した段階で、技術の利便性と必要性が合致した時には、今度は逆に日本で一気に普及する可能性もあるということでしょう。令和6年5月に厚生労働省から発表された医療DXの推進に関する工程表に基づき、医療分野でもさまざまな対応が進められているところですが、AI技術の発展により一気にDX化が進むということが期待されるところです。

歯科医院を取り巻く環境において、最新のチェアーや、CT、マイクロスコープなど、先進医療機器を備えて開業する歯科医院では、開業当初からあらゆる疾患に対応できる技術を備えており、来院する患者さんの満足度も高いものがあります。さらに今後、医療DXの進展により、より効率的な医療提供体制が整う可能性があります。これまで長年に亘り培われてきた技術や知識を、開業時に一気に獲得して発展をすることが、いわばリープフロッグ現象の状態にあると捉えると、新規開業による先進的な技術の拡がりの一つ一つが、歯科医療全体の活性化の一翼を担うものと思います。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏