トランスフォーメーション(X)、すなわち変化や変革、あるいは変形と訳される言葉ですが、身近な内容としてはデジタルトランスフォーメーション(DX)が挙げられるでしょう。新型コロナウイルスの感染が拡大した際に注目を浴びるようになり、その後産業界ではデジタル化により多くのビジネスモデルが提案され、今では一般的な取り組みとして普及することとなりました。

医療分野においても、政府による医療DXとして日々推進されているところですが、2023年DX白書によると、医療福祉分野におけるDXの取組状況は9%にとどまっている現状です。その次は宿泊業、飲食サービス業の16%となっており、もっとも取組状況が高い分野は、金融業、保険業、情報通信業の45%のほか、農業、林業においても45.4%という状況のようですから、医療分野においては個人情報の共有におけるセキュリティの問題や人材不足の問題などが大きく影響しているのかもしれません。とはいえ今後の社会の構造変化に対応するべく、医療分野におけるDXも強力に推進されていく分野であるといえるでしょう。

近年注目を浴びているトランスフォーメーションという言葉ですが、DXにとどまらず、さまざまな分野に使われています。二酸化炭素の排出を減らし、環境に優しい変化を促すグリーン・トランスフォーメーション(GX)、SDGsに代表される企業や社会の持続性を実現する取り組みであるサスティナブル・トランスフォーメーション(SX)、人との関りやサービスを通じてよりよい関係を生み出そうとするヒューマン・トランスフォーメーション(HX)のほか、被爆量を極限まで減らす一方で撮影範囲を飛躍的に拡げる変革を目指すX線トランスフォーメーション(XX)という言葉まであるようです。

医療DXも研究を重ねる中で、今までとは全く違う概念や研究成果が現れ、一気に変化を伴う時代が来るのかもしれません。歯科医療は、患者さんの口腔内に触れることではじめて治療が進む特殊な分野のため、さまざまな変革を図ることからは遠い位置に存在すると考えられていますが、変化することによる暮らしやすさ、働きやすさを柔軟に受け入れる体制は維持しておきたいところです。日々変化を重ねることにより、患者さんだけでなく、ここで働こうとするスタッフも含めて心地よく過ごせる環境づくりに向けて、残すべきものと変わるものとの融合を目指すことが大切と考えます。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏