私は2008年に若手歯科医師の育成と歯科界の発展を願って、『歯科臨床の7つのツボ100選』と言う本を上梓した。この本は、『1 時間で読めて30年使える』と言う副題をつけ、 現在約15年が経過した。 今夏、 北海道で講演の機会を得て、 久々に「歯科臨床の7つのツボ」 の演題で講演を行ったが、 オ ーディエンスの反応を見ると、 15年経った現在でも通ずるものが多いように感じた。 本の内容は私が主宰する上田塾例会終了後に、 勤務医や開業間もない若手の院長にアドバイスをした居酒屋での会話の内容をピックアップしたもので、 上田語録の様なものである。 内容は「臨床のツボ」、「勉強のツボ」、「開業のツボ」、「医院経営のツボ」、「患者さん対応のツボJ、「スタッフを育てるツボ」、「若手歯科医師を育てるツボ」 と7つのChapterに分け執筆したものであるが今回は前段として、 はじめのツボ5選を現状に合わせた形にアレンジして紹介してみたい。
患者さんが本当に望むものは何か?と考えた時に、まず必要なことは、『患者さんの目線に立った歯科医療の提供』である。 実際治療を受けるのは、 患者さんである以上、 歯科医療をどのようにみているのか気になるところである。 患者さんは医科よりも歯科を怖いと感じる人が多い。 また、 実際は患者さん自身が思うよりも治療が必要な箇所も多く、 全顎的に扱わなければならない事も少なくない。 そうなると治療の期間、 時間、来院回数が増えるため、場当たり的に治療を行っても先に進めない。 最初に最終補綴装置のイメージを描き、それから治療手順を考えてスタートする必要がある。
歯科治療と家の新築 ・ 内装工事はよく似通っているが、 異なる点は歯科治療には工程表がないことである。 そのため、 治療全体の進み具合などが把握できないため、 工程表のような物があれば、術者サイドは患者さんとの十分なコミュニケーションも容易となる。治療期間が長期になればなるほど、患者さんとゴー ルを共有することが重要となり、 それができなければドロップアウトに繋がってくる。
現在、 若手の歯科医師にとっては大変な時代となった。 難関な国家試験をクリアして臨床に携わっており、 これから開業も視野に入れている先生も多いと思うが、 決して以前のように全ての歯科医院で余裕のある経営が出来ているわけではない。これからの『歯科医院の現状を打破するには「技術」「経営」 の両方の力が必要』である。 お金がないとセミナーに参加して学ぶこともできないし、経営だけではいつかは行き詰まる。歯科医院経営を成功させるためには、技術というハードと経営というソフトの『総合力』が不可欠である。 次回は本の根幹となる、 臨床のツボ42選から歯科臨床のツボ を紹介してみたい。
北九州市開業
上田 秀朗 先生