コロナ禍前には年間入園者数3,000万人以上を誇っていた東京ディズニーリゾートの入園料が、本年10月1日以降は最高で10,000円を超えるという発表がありました。コロナ禍の最中ではさすがに入園者数も756万人まで減少しましたが、2023年3月期の決算発表においては、入園者数も2,209万人まで回復し、2024年3月期目標では2,500万人を見込んでいます。まだまだコロナ禍前の入園者数には及ばない中での入園料の値上げですが、業績予想を見ますとテーマパーク事業とホテル事業を合わせた売上高を5,400億円と見込むなど、過去最高の実績を目指して取り組んでいるようです。
増収を見込む要因としての大きな点は、一人一人の体験価値を向上させることに力を入れていることです。東京ディズニーリゾートの入園料は繁忙期、閑散期に応じて価格が変わる変動制となっていますが、最高の10,000円を超えると若年層はなかなか行くことができません。入場者は減少することが予想されますが、一方、待ち時間の解消や混雑の緩和につながることから、その金額でも入場できる人にとっては満足度が向上します。日々来店客で溢れかえるショップにおいても余裕を持って買い物ができることから、グッズやお土産の購入も増えることでしょう。実際、一人あたりの売上高を16,000円と設定しているようですから、家族4人で土日を過ごすと、東京ディズニーリゾート内だけで二日間で約150,000円もかかることになります。しかし入園者がそれだけの体験価値を得られると感じれば、決して高い金額ではないのかもしれません。一方、平日や自由な予定で閑散期に行くことができる人は、従来通りの金額で入場できることは安心感につながるでしょう。
企業のマーケティングの世界では、顧客体験価値を重視した取り組みが行われています。ポイントとしては、①五感を通じて得られる「感覚的価値」、②信頼性や安心感といった「情緒的価値」、③興味や好奇心に訴えかける「創造的価値」、④新しい体験を味わえる「行動価値」、➄その中(集団)に属していたいとする「帰属価値」の5つの要素が重要とされています。顧客体験価値を高めることにより、その体験に満足をし、再びそのサービスを利用したいと思い、多少高い金額でも安心感を求めて何度も訪れることにつながるというものです。
歯科医院においては、治療後のメンテナンスにスムーズに移行できるかどうか、あるいは昨今の材料費の高騰による自由診療費の見直しを図る際などには、患者さんの体験価値が向上されているかといったことや、歯科医院への要望が満たされているかどうかが大きく影響することでしょう。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏