日常の診療において、疾患の予防に向けた歯周メンテナンスを主な診療方針として掲げる歯科医院は約8割を超えています(デンタル・マネジメント・コンサルティングの調査資料より)。実際、厚生労働省がまとめる社会医療診療行為別統計調査の結果においても、歯科疾患管理料、歯科衛生実地指導料および診療情報提供料を含む「医学管理等」が、令和4年6月診査分では14.5%を占めるようになり、ここ10年で約3割も増加するなど、予防に対する取組みが飛躍的に進んでいるようです。身近なところでは、各自治体等において行われる歯科健診においても、自治体によってはすでに全世帯に亘る歯科健診が実現するなど、ますます予防の重要性は高まっているといえるでしょう。
 
日本では少子高齢化が急速に進むと同時に、2040年には100歳以上の人口が30万人になると予測しています。内閣府は、さまざまな分野においてこれまでにない革新的な技術の創造を目指すべく、挑戦的な研究開発を進める「ムーンショット型研究開発制度」を推進しています。目標1から目標9までの9分野の中で、健康・医療推進本部は目標7として「2040年までに、主な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサスティナブルな医療・介護システムを実現」と掲げています。人生100年、それをさらに健康の不安なく迎えようとする取り組みです。平均寿命が大きく伸びてきた昨今、次は健康寿命の延伸です。
 
歯科が期待される分野として、歯磨き時に歯ブラシが口内細菌や唾液の状態を計測する研究開発の例が挙げられており、心身のデータを正確に収集することを目標としています。予防に力を注ぐ歯科医院においては、院内で口腔内の環境や細菌を調べる設備が導入されている医院もあります。今後さらに革新的な技術開発を目指す上で、現在の延長線上にはない技術が開発され、まったく新たな研究成果が発表されるかもしれません。

いずれにしても、全身疾患に大きな影響を及ぼすことへの理解が進む歯科の分野において、更なる予防医療に向けて心身の状態を正しく測定することが家庭でも行えるようにでもなれば、口腔疾患ひいては全身疾患をコントロールする役割として、歯科医療が担う役目はますます大きな意義を持つのではないでしょうか。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏