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第5回 口腔機能管理の本質とは? ― 歯科衛生士に託されるもの

令和8年6月の診療報酬改定で、歯科衛生士による口腔機能管理に対する重点化が図られ、これに携わる歯科衛生士に対し所定の研修を受けることが義務づけられました。皆さまも、歯科医師会から案内されるセミナースケジュールに目を通しながら、「どのように対応していくか」「誰に受講してもらうか」など、悩まれているのではないでしょうか。

研修を受けていただく歯科衛生士は、多くの場合、日頃からSPTを担当してくださっているベテランさんだと思います。長年、お一人お一人の口腔と向き合ってきたDHさんに、これからは口腔機能の管理も担っていただくことになります。

ここで、少し立ち止まって考えたいことがあります。口腔機能管理とは、そもそもいったい何をする仕事なのでしょうか。

診断基準に沿って口腔機能低下症を評価し、舌圧を測定し、ペコパンダなど必要なリハビリテーション器具や訓練メニューをお渡しして、次回また評価する ― これが口腔機能管理だとイメージされている先生が多いと思います。もちろん、これで間違いないのですが、ただこれだけが口腔機能管理ではないのだとも、私は考えています。

近年、興味深いエビデンスが蓄積されつつあります。昭和医科大学高齢者歯科の縦断研究(2022年)では、歯科外来で定期的な口腔健康管理を受けた患者群において、舌口唇運動機能や咀嚼機能が有意に改善した一方、定期的な管理が継続されなかった群では、口腔衛生や口腔湿潤が悪化していました。また新潟大学予防歯科の横断研究(2025年)では、定期的に歯科検診を受けている高齢者は、受けていない高齢者に比べ、口腔清掃状態・咀嚼能力・嚥下機能が有意に良好であることが示されました。

つまり、口腔機能を守るために本当に効いているのは、単発の機能評価でも、器具の配布でも、リハビリメニューでもありません。歯科との関係が途切れないこと、通い続けていただくこと、これこそが口腔機能管理の本質なのです。もちろん機能評価も、リハビリ器具の活用も欠かせない。しかし、それらは歯科に「通い続けていただくため」の手段として位置づけて初めて、本来の力を発揮します。

長年SPTで通ってこられている患者さんは、加齢とともに口腔機能も少しずつ変化していきます。歯を守ってきた延長線上で、「食べる力」も一緒に守っていく。「10年後もお孫さんとお寿司を食べに行きたい」「最後まで自分の口で好きなものを食べたい」、こうした患者さんの願いを、歯科衛生士が引き出し、共有し、同じ未来を一緒に見つめながら、通い続けていただく。そのために、機能評価もリハビリ器具の活用も存在するのです。

さて、研修義務化の話に戻りましょう。研修は、単に算定要件を満たすためのものではありません。「歯科との関係を絶やさない技術」を身につけるための機会、そう思って、前向きに捉えましょう。長年SPTで信頼を築いてきた歯科衛生士だからこそ、この最も大切な役割を担っていただけるのだと信じています。

次回はいよいよ最終回、これまでの5回を踏まえて「医科歯科連携の未来像」を考えます。


広島県福山市開業
猪原 健 先生