
BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)の略で、地震や火災・風水害、サイバー攻撃等によるシステム障害など不測の事態に対して、事業資産の被害を最小限に抑えながら事業を継続あるいは早期に回復することを目指すための計画です。以前から内閣府や経済産業省のほか、厚生労働省においても医療施設の災害対応のための事業継続計画としてガイドラインが示されていますが、令和8年6月の診療報酬改定において、医科では「機能強化加算」を算定する要件としてBCPの策定が義務化されました。かかりつけ医機能を担おうとする医療機関には、災害等の事態が生じても地域医療を継続できるような体制を整備することが、強く求められてきたといえるでしょう。
歯科においては、まだBCPの策定が施設基準とはなっていませんが、熊本地震や千葉の豪雨災害、あるいは近年深刻な被害となっているサイバー攻撃などを考えると、算定要件はなくとも歯科医院で独自にBCPを策定することは、有事における事業機能の早期回復や患者・院長・スタッフを含めた歯科医院に関わる全員の安全確保の体制を大きく左右することになるでしょう。大掛かりな内容のものを作成する必要はなく、突然の有事の際に何をすればよいか右往左往しなくても済むように、誰が、どのように役割を担い、何を最優先して初動対応を取るか、を定めることに他なりません。
スタッフそれぞれがどの役割を担い、どのような対応をするかを決めておくだけでも、緊急災害時の行動の拠り所になるはずです。たとえば、①患者・スタッフの避難誘導路の確認、安全確保の方法、②緊急連絡体制の整備、安否確認方法の手段および連絡方法の整備、③院内の在庫確認と診療器機の被害確認、④カルテ、レセコン、レントゲンデータのバックアップ確認および予約表やカルテの紙運用、➄診療所を休診とする判断、復旧対応、診療再開の基準策定、などについて、それぞれに正担当と副担当を置き、院長は統括責任者として、患者・スタッフの安全確保を最優先事項として全体判断を行うようにします。
厚生労働省が行う、医療施設調査による歯科診療所数の推移からも、医療法人による歯科医院の増加がますます進んでいる状況です。医療機器が充実し、診療所面積も広くなり、それに伴いスタッフ数も増加して歯科医院が大規模化している現状では、災害やサイバー攻撃が予測不可能なことであるとはいえ、万が一の事態に備えて、独自にBCPを策定することは今後ますます重要なことになると思います。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏