
これまで国内で使用できる歯科用局所麻酔剤は、リドカイン製剤、プロピトカイン製剤、メピバカイン製剤の3種類でした。しかし、2025年1月より「セプトカインⓇ配合注カートリッジ(アルチカイン製剤);以下、本剤」が販売開始されることで、歯科用局所麻酔剤の選択肢が広がり、歯科医療への大きな貢献が期待されています。
本剤は4%アルチカイン塩酸塩及びアドレナリン酒石酸水素塩(1/100,000アドレナリン相当)を有効成分として含有されている製剤であり、1カートリッジは1.7mLです。
アルチカインは、中間鎖としてアミド結合を有するためアミド型局所麻酔薬に分類されますが、その構造式にはエステル結合が含まれており、約90%が血中の非特異的エステラーゼで代謝される特性を持っています。また、一般的な局所麻酔薬はベンゼン環を有していますが、アルチカインはベンゼン環の代わりに硫黄を含むチオフェン環を持つ唯一の局所麻酔薬です。
海外において、アルチカインは歯科用局所麻酔剤として、1976年にドイツとスイスで導入されて依頼、1983年にカナダ、1998年に英国、2000年に米国に導入されました。また、アジアでも中国や韓国などで導入されており、世界的にはリドカイン製剤と並んで使用されている代表的な歯科用局所麻酔剤です。
一方、国内において、本剤の国内承認を得るため、岡山大学病院 歯科麻酔科がすべての医師主導治験の主幹施設となり、第Ⅰ相試験(薬物動態試験)、第Ⅱ相試験(探索的臨床試験)及び第Ⅲ相試験(検証的臨床試験)が実施されました。これらの臨床治験データと海外で報告されている臨床研究を加味し、2023年8月 にジーシー昭和薬品が製造販売承認申請を行い、2024年9月に承認を取得しました。 なお、本剤は新規医薬品のため、販売開始後の6ヵ月間において市販直後調査をすることが義務付けられています。この調査では、本剤が使用された全例(全施設)を対象に、重篤な副作用症例等の発生状況を迅速に把握することが目的です。よって、本剤の安全性や有効性などの特徴を十分に理解した上で使用することが重要と考えます。
玉井歯科商店