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今でこそデジタル義歯は一般的な技術として認知されているが、私がその可能性に初めて触れたのは約10年前である。ヨーロッパのイボクラール社、VITA社、アマンギルバッハ社を訪れた際、デジタルで義歯が設計・製作される工程を目の当たりにした。

「これなら、私にも義歯の技工ができるかもしれない」──そう思ったのがすべての始まりである。 当時、JPDA(有床義歯学会)の優秀な技工士たちと過ごす時間は、私にとって刺激そのものであった。彼らが夜を徹して義歯の話を語り合う姿に影響を受け、「自分でもやってみたい」と強く思うようになった。 しかし、アナログ技工の世界はあまりにも奥深く、そして膨大な時間を要する。臨床を行いながらその道を極めるのは、正直に言って無理だと感じていた。そんな私にとって、デジタル技工はまさに一筋の光明であった。

1. ミリングマシーン1号の導入

8年前、日本でもようやくデジタル義歯を製作できるシステムが発売された。私は迷うことなく購入を決断した。しかし、そこからが本当の苦労の始まりであった。まず、材料が国内では手に入らず、個人輸入が必要だと知った時点で大きな誤算。さらに、試適義歯を作るだけで1枚2万円もするミリングディスクが必要だと判明し、思わず天を仰いだ。加えて、当時の設計ソフトは頻繁にフリーズし、土日の早朝から夜遅くまで、モニターの前で格闘を続けた。「デジタル化とは、便利になることではなく、耐えることなのか」と何度も自問した。

2. 3Dプリンターの導入

試行錯誤を重ねること2年。ようやく国内で義歯用の3Dプリント材料が販売された。価格は1床あたりわずか2000円。「これだ!」と確信し、すぐに3Dプリンターを導入した。最初はサポートピンの位置や造形角度など、無数の失敗を繰り返した。しかし条件を詰めていくうちに、従来義歯よりも高精度かつ短時間で義歯を製作できるようになった。ホビー用プリンターも試したが、造形エラーや寸法ズレが多く、臨床使用には不安が残った。やはり、患者の口腔内に入れるものは信頼性が最優先である。結論として、多少高価であっても歯科医療用のプリンターを導入することを強く推奨する。

3. ミリングマシーン2号の導入

デジタル義歯の世界に足を踏み入れて4年、私はさらなる挑戦を決断した。海外の友人が「これは絶対に買うべきだ」と太鼓判を押した大型ミリングマシーンを導入したのである。この機械は、義歯のみならず金属まで削れる強力なスピンドルを搭載し、精度も群を抜いている。従来のデジタル義歯では、人工歯の接着時に浮き上がりが生じやすかったが、このマシーンは接着後に補正ミリングを自動で行う。その結果、内面適合だけでなく咬合まで完璧に再現できる。初めてその仕上がりを確認したとき、「ついにここまで来たか」と胸が高鳴った。

これらの機器やソフトウェアの保守料を冷静に計算することは、正直に言って恐ろしい。しかし、それらの試行錯誤や投資が、やがて多くの臨床家や技工士たちの役に立つ日が来ることを願っている。そう信じて、私は今日もまた、新しいデータを前に義歯と向き合っている。


富山県射水市開業
山崎 史晃 先生