
歯科医院においても、産前産後休業や育児休業を取得するスタッフが増えてきている状況かと思いますが、現実的に復職する割合はまだすべてではなく、職場環境によっては休業の満了後に復職の条件がクリアできず、退職を余儀なくされている実態があるのではないでしょうか。
厚生労働省において、令和5年1月から6月に行なわれた「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」における報告書の中で、「第1子出生年別にみた、第1子出産前後の妻の就業変化」(出典:国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2021年))では、2015年~2019年の出産前有職者を100とした場合の出産後の継続就業率は69.5%となっているようです。
スタッフの採用が非常に難しい現状においては、結婚や出産を迎えても「辞めなくてもよい」仕組みをどう作るかが最大の人材確保術となります。事務職等とは違い、歯科医院での業務は在宅勤務やテレワークが難しい職場とはいえ、①復職できる制度があること、②そのための良好な人間関係、③復職後の業務担当などが事前に設計できていること、が復職を成功に導く柱と言えるでしょう。
最近では、働き方改革により、週40時間の勤務に合わせて診療時間の短縮を行ったり、新たな休診日の設定を行ったりする歯科医院が増えていますが、診療終了時刻が早まることなどは、復職の体制を整える上では好ましい傾向です。
実際に復職を前提として院内業務の制度設計を考えますと、以下に挙げる内容を検討する必要があります。①AIなど、自動化設備を活用して業務効率化を推進する、②誰か特定のスタッフ一人に頼らなくてもよい業務分担の仕方を考える、③時短制度の導入、およびその方法を検討する。時短制度は、1日数時間からの短時間勤務や午前勤務を可能にしたり、出勤日数を少なくしたりすることで、フルタイム勤務以外の働き方を推進することです。
くれぐれも注意しなければならないことは、フルタイム出勤をしないことがスタッフにとって不利にならないようにすることです。つまり、フルタイム出勤をしていないことで責められたり、差別的扱いになったりしないように配慮しなければなりません。
スタッフが産休や育休から復帰した後に、現実的にどのような問題があるかを考えると、①子どもの急病や急な体調変化、ケガなどによる保育施設等からの呼び出しや当日欠勤、②参観日や運動会、発表会、その他行事への参加による休暇申請、などがありますが、場合によっては有給休暇を活用するなどにより取得促進を図ることも可能です。
いずれにしても、復職を容易にするためには、職場の雰囲気づくりが欠かせません。医院全体で、復職を前提とした職場環境の整備を進めるために、既存スタッフの意識づくりや、お互いが自然にフォローし合える職場文化を醸成することが大切です。
一方、復職する側にも一定の責任と意識を持ってもらうことが必要で、勤務時間よりも出勤時の職務姿勢に評価の重点を置き、仕事においてはお互いが過度な気遣いは不要とする関係づくりを目指したいところです。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏