
1:自費導入で利益アップを目指す前に知っておきたいこと
近年、保険点数の改訂等による保険診療の伸び悩みや、物価高(材料費の高騰)など、歯科医院を取り巻く環境は年々厳しくなっています。その中で、自費診療に力を入れることは、クリニックの経営安定につながる有効な手段の一つとなります。一方で、自費を増やしてクリニックとしては増収したのに、なぜか手元資金が無い、資金繰りが苦しい、という場合も少なくありません。そこで本稿では、自費診療比率を上昇させる場合の歯科経営上の注意点について述べます。
2:入金のタイミング
保険診療と自費診療では、入金のタイミングが異なります。保険診療はレセプト請求で月ごとに入金されますが、自費の場合はケースバイケースです。一括で請求する場合もあれば、治療の進行に応じて請求する場合もあります。入金のタイミングが契約等により異なる点は要注意となります。
3:自費が増加して利益は出ているのにお金が手元に無い理由
自費診療の増加を目論む際には、設備投資を要する場合が少なくありません。設備をキャッシュで購入した場合、支出は購入時に一括で発生します。一方で、税務上は設備の金額にもよりますが、減価償却費として、数年にわたって経費化されて損益に影響します。そのため、資金収支としては、先行して支出する一方で、損益としては、将来にわたって発生します。ここに損益と資金収支でギャップが生まれます。さらに、税金面でみると、支出は一括で発生する一方で、経費は一括で計上されないことから、損益としては利益が発生することとなり、利益に対する納税も発生することとなります。こういった要因により、利益は出ていても、現金が手元に無い、残らないということが起こります。このギャップが資金繰りを圧迫する原因となります。設備を導入する際には、減価償却の計上スケジュールも見据えて、キャッシュフローをベースに判断することが重要となります。
4:消費税にも要注意
自費診療のもう一つ注意したい点が「消費税」です。保険診療の消費税については非課税ですが、自費診療の消費税については課税対象となります。自費診療を含む、消費税の課税対象となる取引が年間1,000万円以上と見込まれる場合は、原則として2年後に消費税の課税事業者となります。そのため、簡易課税制度の検討など早めの対策を行う必要が出てきます。なお、消費税の納付は多くの場合、年に数回となります。納税資金を確保できるように、資金繰りには十分注意が必要となります。 また、多くの場合、消費税に関する届け出は、適用を受けようとする事業年度が始まるまでに提出しておく必要があるため、提出期限にも注意が必要です。なお、期限を過ぎてしまうと基本的には適用を受けられなくなると考えておくべきです。
5:消費税の還付についての注意点
消費税に関しては前述の通り年間の消費税の課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者となる場合や、自ら届出書を提出して課税事業者となることで、多額の設備投資を行った場合に納税した消費税が還付されることがあります。しかし、一度、課税事業者となると、その後何年か消費税の課税事業者である必要があるため設備投資を行った事業年度のみで考えるのではなく、その後何年かを考慮して意思決定をする必要があります。
6:自費比率アップで成功する歯科医院の共通点
私たちが支援している歯科医院の中で、自費比率アップに成功しているところには共通点があります。それは、「数字で経営を見ている」ことです。自費・保険を分けて毎月の売上・費用を管理し、必要な対策を立てています。医療業界の赤字比率が急激な上昇を続けており、経営改善のためにリアルタイムで業績を把握することは必須となってきています。経営の「見える化」を行い、数字に強い経営者になることがこれからの時代には必要となります。
税理士法人 和田タックスブレイン 代表税理士
髙田 幸史 先生