昨今のスタッフに限ったことではないのかもしれませんが、スタッフが思いがけず患者さんの対応に苦慮するケースは多いのではないかと思います。患者さんとの会話において、受け答えの内容としては特に間違ったことをしているわけではないにも関わらず、必要最小限の言葉で交わされるコミュニケーションが、時として相手にとっては冷たく感じる瞬間があります。スマホがコミュニケーションの主な手段となり、友人同士のメールのやり取りは端的に返すことが多く、その中でいかに素早く意思の疎通ができるかということは自然なことかもしれません。両者が良好な人間関係ゆえ成り立つ内容であり、その会話のやり取りに特に問題意識を抱くこともありません。そうした感覚が、目の前のリアルな患者さんとの会話においても出てしまい、相手に対して冷たい印象を与えることに繋がっているとすれば、それは相手への配慮が不十分な、いわば言葉が足りていない状態です。

近年、ChatGPTやCopilotなど対話型のAIツールが日常的に使われるようになってきました。言葉のやり取りのみならず、EXCELでの表計算やPDFを使ったファイル作成など、煩雑な作業を伴なうものでもほんの数秒で的確な回答が得られることから、個人に限らず企業でも加速度的に利用が進んでいる状況です。アプリで実際に何か尋ねてみると、こうしたAIツールでさえも問いかけに対する最初の言葉は何かというと、「素晴らしい○○ですね!」「とてもよい○○です。」など、相手の考えを認める言葉から始まります。何かを尋ねるということは、自信がなく、よくわからない状態ですから、いきなり答えを伝えるのではなく、一旦相手に寄り添う姿勢を見せられると何となくほっとするものです。

知能指数をIQと示すのに対して、心の知能指数としてEQ(Emotional Intelligence Quotient)という概念があります。EQで測ろうとする対象である「心」には、自分の感情だけでなく相手の感情も含まれており、つまりEQで測るものは、相手が今何を思い、どのような関係を求めているのか、それに対してどのように対応するべきかということを判断する能力ということでもあります。患者さんからの問い合わせや問いかけには、何か心の中に解消できないものがあり、その意図を汲み取ってほしいという思いを持っているものです。相手から発せられる言葉の裏にある気持ちを、どうすくいあげることができるかを考えた場合、友人との端的な言葉の交換が日常的な人にとっては、少しハードルが高い問題なのかもしれません。

しかし、日常の何気ないやり取りでも大丈夫だと思っていたものが、悪気はなくとも、実は患者さんを不快にさせてしまうことがあるのだということを考えておく必要があります。会話を始める前にプラスひと言、「今日はどうされましたか?」「お元気そうですね!」など、相手に焦点をあてる言葉から始めることで、患者さんからの印象は変わり大きな安心感につながります。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏