転職・就職情報事業を手がける企業の調査結果によると、自分が仕事で評価されていると感じるときは、①上司から褒められた時(53%)②昇給した時(31.0%)、③責任ある仕事を任されたとき(28.1%)ということです。

人は誰しも褒められると嬉しいものですが、実際、半数以上が一番にそれを求めているという結果となりました。褒める側からすれば、相手との関係性を気にするあまり躊躇したり、褒め方がわからずタイミングを逃してしまったりするなど、なかなか面と向かって誉め言葉をかけられない場合があります。そのような時には、今取り組んでいる内容を取り上げて声をかける、現在関わっている内容について、できることが増えた場面や伸びたと感じた時を見逃さずに声をかける、など、対象者の頑張りが垣間見える時を捉えて声をかけるとよいでしょう。

一方、スタッフとのコミュニケーションを重ねる中で、時にはスタッフが悩んでいる場面に遭遇することがあるかもしれません。仕事へのモチベーションをどう維持するかを考えることになりますが、新たなことを学ぶ際の学習曲線について理解をしておくとよいと思います。

ドイツの心理学者であるハーマン・エビングハウスによって提唱された理論ですが、人が学習をすることで成長する過程には、学習を始めた段階である準備期、準備期に身につけた知識によって成長できる発展期、発展期の成長が停滞し再び次の準備期となる高原期があることを示しました。

頑張った時間に即時比例してスキルが上がるものではなく、準備期間を乗り超えた先に大きく伸びる時期がやってきます。新たに入職したスタッフが、道半ばで辞めることなく仕事を続けるためには、準備期をいかにうまく乗り越えられるかが重要です。仕事を遂行する上で伸び悩む、あるいは思うようにスキルを上積みできていないと見受けられるときには、先を見据えた上司からの、適切な関りが大切であることは言うまでもありません。

スタッフを育成する際の大切なポイントとして、できるだけ広い知識を経験させることです。入職してから一通りのことを経験するまでの、せめて1年という期間を、途中で気持ちを途切れさせることなく過ごすためにも、ときには業務に無関係に思える内容についても経験させ、幅広い対応力を身につけてもらうことを目指します。

積み木に例える考え方ですが、目の前の積み木を単に上へ上へと積むだけでは、高く積む前にバランスを崩して倒れてしまいます。一方、土台となる部分、つまり基礎になるものを広く積み、そこに上積みする形で新たな積み木を積むことを繰り返していくと、高い位置まで安定的に積み上げることができます。

東京大学大学院教育学研究科の研究によると、積み木を高く積むためには、①物理的知識、②空間的推理、③分類、④系列化、の4つの要素を必要とするそうです。あらゆる角度からの広い知識を身につけ、多くのことを経験することにより、人は大きく成長することができるのだと思います。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏