1) 概要
固定資産のうち使用または時の経過によって価値の減少するものを減価償却資産といいます。減価償却とは事業や業務のために用いられる建物や器具備品などを取得時に損金または必要経費とするのではなく、耐用年数にわたって一定の方法で費用配分することをいいます。これにより、使用または時の経過による価値の減少が費用化されます。ただし、次の区分の場合には計算が異なります。
- 使用期間が1年未満または10万円未満の場合
取得価額の全額を業務の用に供した事業年度または年の損金または必要経費とします。 - 10万円以上20万円未満の場合
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、その全部または一部の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額をその業務の用に供した事業年度または年以後3年間の各年分において損金または必要経費に算入することができます。 - 10万円以上30万円未満の場合
一定の要件を満たす中小企業者等が令和6年3月31日までに取得等した取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産については、その取得価額の合計額のうち300万円(法人のうち事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額)に達するまでの取得価額の合計額をその業務の用に供した事業年度または年の損金または必要経費に算入できる特例です。この規定は建物、器具備品などの有形減価償却資産のほか、ソフトウェア、特許権等の無形減価償却資産も対象となります。なお、令和4年4月1日以後に取得する場合は、少額減価償却資産から貸付け(主要な事業として行われるものは除く。)の用に供したものが除かれます。なお、上記2.と3.は選択適用となります。また、毎年、市町村等に申告する償却資産税について上記1.及び2.は申告対象外ですが3.については免税点以下の場合を除き申告義務があります。
2) 減価償却方法等
減価償却方法には主に「定額法」「定率法」があります。税務署に届け出することにより償却方法を選択することができますが、何も選択しなかった場合には個人事業主の場合には「定額法」、法人の場合には「定率法」により計算します。(ただし、建物、建物付属設備、構築物に関しては「定額法」)また、減価償却費の計上は個人事業主の場合は強制償却(計上しなければ翌年以降の償却費は前年に減価償却を行ったものとして計算)、法人の場合は任意償却(計上してもしなくてもよい)となります。
(3) 課税売上高について
消費税法では国内において事業者が行った事業として、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して消費税を課すると規定されています。一方で、本来的には消費税の課税対象ですが社会政策的な配慮など一定の理由により消費税が課税されない取引も13項列挙されており、その中に健康保険法等に基づく療養が含まれています。これにより、保険適用内の治療については、消費税が非課税となります。また、自由診療による治療については、基本的に健康保険法等に基づく療養には該当しないため消費税の課税対象となります。この消費税が課税対象となる収入を課税売上高と言います。課税売上高には自由診療収入のほか、通常の資産の譲渡に該当する歯ブラシなどの物品の販売、金属の売却等があります。
(4) 具体的な計算方法
定額法と定率法で取得後5年間の減価償却費を具体的に計算すると以下のようになります。前提条件として令和5年1月に取得し12か月分償却するものとします。単位は千円です。
- 定額法 減価償却費 = 取得価額 × 償却率
- 定率法 減価償却費 = (取得価額 - 前年までの償却累計額) × 償却率
資産名称 | 償却方法 | 資産種類 | 耐用年数 | 償却率 | 取得価額 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 |
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歯科 ユニット | 定額法 | 器具備品 | 7年 | 0.143 | 3,500 | 500 | 500 | 500 | 500 | 500 |
定率法 | 0.286 | 1,001 | 714 | 510 | 364 | 260 | ||||
X線装置 | 定額法 | 器具備品 | 6年 | 0.167 | 10,000 | 1,670 | 1,670 | 1,670 | 1,670 | 1,670 |
定率法 | 0.333 | 3,330 | 2,221 | 1,481 | 988 | 659 |
※ 一般的に定率法の場合は初年度の償却費が高くその後徐々に減少していくのに対し、定額法は毎期一定の償却額となります。当初は定率法のほうが、償却額が高くなりますが償却期間の後半になると逆転し、定額法のほうが高くなります。
税理士法人 和田タックスブレイン 代表税理士
髙田 幸史 先生