
(1)概要
贈与は「あげます」「もらいます」といった、あげる人ともらう人の双方の意思表示があって初めて成立する契約行為です。相続税対策として行われることも少なくありません。しかし、せっかく財産を渡したにもかかわらず、贈与と認められないこともあります。また、令和8年度税制改正により、令和9年からNISAのつみたて投資枠が0歳から17歳にも拡大され、子や孫への早期の贈与を検討する方も増えるでしょう。そこで今回は、生前贈与を行う際に注意しておきたい点について説明します。
(2)未成年者に対する贈与
未成年者であっても贈与を受けることができます。ただし、本人が贈与を受けることの意味を理解できるかどうか、いわゆる「意思能力」について注意する必要があります。意思能力について「何歳以上であれば認められる」という明確な年齢の基準はなく、本人の年齢や理解能力、贈与する財産の内容などに応じて判断されます。例えば、0歳の乳児は、自ら贈与の意味を理解して意思表示をすることができないため、親権者などの法定代理人が本人に代わって贈与を受けることになります。なお、未成年者であっても、贈与の内容を理解できる程度の意思能力があり、単に財産を無償で受け取るだけの贈与であれば、原則として法定代理人の同意を得ずに本人が贈与を受けることも可能です。
また、法定代理人が本人に代わって贈与を受けた場合には、その後も本人の財産として適切に管理することが重要です。例えば、法定代理人が本人に代わって預金の贈与を受けたにもかかわらず、その後も贈与者が通帳や印鑑等を保管し、贈与前と変わらず自らの財産と同様に管理しているような場合には、本当に未成年者へ贈与された財産なのかが問題となる可能性があります。
このように、乳幼児など本人が自ら意思表示できない場合でも、法定代理人を通じて贈与することができます。ただし、贈与後も「誰の財産なのか」が明確になるよう、適切に管理しておくことが重要です。
(3)贈与契約書の作成
贈与契約は口頭でも成立するため、贈与契約書の作成は贈与の成立に必要不可欠というわけではありません。しかし、後になって「本当に贈与があったのか」を証明する必要が生じた場合、贈与契約書がなければ、その説明が難しくなることがあります。特に、相続税の税務調査が行われるのは贈与者が亡くなった後です。その時点では贈与者本人から当時の事情を聞くことができないため、双方の意思を客観的に確認できる資料を残しておくことが重要です。
実際に、当事務所が対応した相続税の税務調査でも、生前の贈与が本当に成立していたのかについて、確認を受けるケースが多く見受けられます。そのため、贈与があったことを後から説明できるよう、贈与契約書を作成しておくことをお勧めします。
贈与契約書には、贈与者・受贈者、贈与日、贈与財産の内容・金額、贈与する旨、受贈する旨など、「誰から誰へ、いつ、何を贈与したのか」が明確になるよう記載します。また、贈与者・受贈者双方が自署することで、双方の意思を明確に残すことができます。氏名を印字して認印を押しただけの契約書では、本人の意思で作成されたものかが分かりにくく、税務調査で贈与の事実関係を確認されることがあります。贈与契約書を作成するだけでなく、預金であれば実際に受贈者名義の口座へ振り込み、振込記録なども保存しておくと良いでしょう。その後も受贈者本人の財産として管理するなど、契約内容と実態を一致させておくことが大切です。なお、受贈者が乳幼児など、自ら贈与の意思表示をすることができない場合には、親権者などの法定代理人が本人に代わって贈与を受けたことが分かるようにしておくと良いでしょう。
※贈与については、贈与する財産や贈与者・受贈者の状況によって税務上の取扱いが異なる場合があります。贈与を行う、または検討する際には、できる限り事前に専門家へ相談することをお勧めします。
税理士法人 和田タックスブレイン 代表社員税理士
髙田 幸史 先生