ホーム » タマヰニュース » 経営情報 » 退院時共同指導と退院・在宅療養支援

ある日、顔なじみのケアマネジャーさんから電話が入りました。

「先生、〇〇さん、覚えていらっしゃいますか。実は半年ほど前に、脳梗塞で倒れられて、急性期の病院を経て、いま〇〇リハビリテーション病院に入院されているんです。来月中旬に自宅退院の予定で、病院から『退院前カンファレンスに、かかりつけ歯科の先生にも入っていただきたい』とのご連絡がありまして……」

続けてケアマネさんから、「〇〇さんご本人が、『退院したら、また先生のところで診てもらいたい。訪問でもいいから、メンテナンスを続けたい』とおっしゃっているんです」とのこと。思わず胸が熱くなるお話ではないでしょうか?

幸い、嚥下機能には大きな問題はないとのこと。ただ、右片麻痺のため以前のように自分で丁寧に歯を磨くことが難しくなっておられ、しかも、お一人暮らし。部分入れ歯の管理も、ご自身だけでは行き届きません。

とは言え、わざわざ私たち歯科が病院まで行って、退院時カンファに参加しないといけないのでしょうか?

日常的な口腔ケアや義歯の管理は、ご自宅では訪問看護師さんや訪問介護の方々に担っていただく必要があります。「いつ、どの清掃用具で磨くか」「義歯はどう洗浄し、どこに保管するか」「ご本人がお口を開けてくださらない時は、どう声をかけるか」― 紙の情報提供書だけでは伝わりきらない細やかな申し送りを、顔を合わせて直接お伝えできる場。それが、退院時カンファレンスなのです。

もっとも、お忙しい診療の合間に、先生ご自身が病院まで出向くのは現実的に難しい場面も多いかと思います。そこで、ぜひ覚えておいていただきたいのが、歯科衛生士の参加だけでも、退院時共同指導料1の500点(在宅療養支援歯科診療所の場合は900点)が算定可能だという点です。日頃からこの患者さんのSPTを担当してきた歯科衛生士だからこそ、口腔内のことや義歯の扱いを一番よくご存じのはず。訪問看護や介護に実地でお伝えする適任者は、他にいません。加えて、主治医との書面でのやり取りには診療情報連携共有料(120点)も併せて活用できます。

退院を迎え、ご自宅での訪問診療が始まります。日常のケアを担ってくださる方々とチームができていれば、かかりつけ歯科医として、また安心してこの患者さんをお迎えできるはずです。

退院は、連携のゴールではなくスタート。病棟から地域へ、そして地域の多職種へとバトンを手渡していく ― そのすべての出発点が、退院時カンファレンスの30分間にあるのです。


広島県福山市開業
猪原 健 先生