
DMC調査による令和5年分の歯科医院の平均的な材料費は約7.5%となっていますが、品質のよいものを選び抜き、その材料によって患者さんの口腔内の環境が長期に亘り維持されるのであれば、多少材料費が多くなることは、むしろ積極的な経費と捉えることができます。
日常の経費管理の点で好ましくないのは、無駄遣いが生じることです。同じ材料費をかけるとしても、品質のよいものを最後まで無駄なく使いきる姿勢を大切にしたいものですが、スタッフにだけ無駄遣いをしないよう要求しても、望ましい方向へ改善することは難しく、院長自らがその姿勢を示すことによって、スタッフも理解し院長に追随できるようになるものです。
歯科医院における大きな経費として、広告宣伝費、人件費(給与賃金、法定福利費含)、地代家賃、減価償却費などが挙げられますが、資金繰りを考えますと、一時にこれらすべてに費用をかけることはできません。相対的に立地が優れている場合には患者さんも比較的多くなることが考えられますが、その場合は広告宣伝費よりもむしろ、患者さんに充実した対応を行うための人件費が必要かもしれませんし、設備投資について考えるとき、同時期に多くの設備を更新するよりは、毎年、順繰りに設備投資を行う計画的な対応をすると資金繰りも安定します。設備投資の場合は、5年先ぐらいを見越しながら、年度ごとに何を導入するかを検討するとよいと思います。
積極的にかける経費を政策型経費とし、抑えるべき経費を抑制型経費として主な経費科目を考えてみますと、以下のように分類できます。こうしてみると、抑制型経費には意識すればスタッフでもコントロールできるものが多く、医院全体で対応可能であることがわかります。経費目標を立て、日々目的意識をもって業務にあたるという、新たな取り組みへの手がかりとすることが可能です。
<主な政策型経費>
材料薬品費、外注技工料、研究図書費、減価償却費およびリース料(設備投資)、広告宣伝費
<主な抑制型経費>
水道光熱費、旅費交通費、通信費、事務用品費、燃料費、雑費
決算対策においては、顧問税理士等を通じて数字を見極めることになると思いますが、どのような対策であっても、何かを購入すれば資金の支出を伴うため、資金繰りへの影響が生じることを忘れずにいたいものです。節税対策が高じて本来の事業を逸脱する投資が増えますと、事業の成長にとって無関係な投資を行っているとして、金融機関からは慎重な評価を受けることになってしまいます。
経費管理のポイントとして大切なことは、使うべき経費と抑えるべき経費とを明確にし、使うべき経費は積極的な姿勢を持ちつつ費用対効果の検証を常に行い、抑えるべき経費はスタッフの協力を得ながら、1円でも多く徹底して抑えるという姿勢を維持することが大切です。
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏