少子化による15歳未満の年少人口の減少および、15歳~65歳未満の生産年齢人口がますます減少する状況において、将来的な人材の確保が困難を極める現在、企業では優秀な人材の定着と育成を目指し、さらに持てる能力を存分に発揮できる環境づくりとなる「リテンションマネジメント」に力を入れるようになっています。

雇用した人材が離れることがないように、具体的には①給与体系の再整備や、評価の明確化・透明化を図る、②教育に力を入れ、職場においてキャリアアップができる、③様々な生活スタイルに柔軟に対応できる勤務体系の再構築(時短制度やフレックスの活用など)など、職場にいることで自らが生き生きと過ごすことができ、成長を感じられる環境の整備を行うことが大きなポイントです。  

人材派遣やアウトソーシングを手掛けるアデコ株式会社が、新卒入社後3年以内に離職しなかった若手社員を対象にした調査を行っており、その中に、「退職や転職をしないで、現在の勤務先に残ることを選んだ理由」について問うたものがあります。もっとも多いのは、有給が取りやすいから(28.1%)であり、以後順に、次の仕事が見つからなさそうだから(25.7%)、同期や同僚との関係がよいから(23.8%)、上司との関係がよいから(21.6%)、福利厚生・手当が充実しているから(20.0%)と続きます。有給の取得や福利厚生の充実については、事業所の労務管理への取り組みが功を奏した結果でしょう。

次の仕事が見つからなさそうというのは少し消極的な回答ですが、転職サイトが存在を強める昨今においても、転職に対する不安があることを表しています。そして、同期や同僚、あるいは上司との人間関係がよいとする、すなわち良好なコミュニケーションについて回答したものが、合わせて45.4%と非常に高い比率となっているのは、つまり、職場での居心地のよさが仕事を続ける上での大きなモチベーションであることを表しています。

転職サイト「エン転職」を運営するエン・ジャパン株式会社によると、「退職時に会社に伝えた理由」の一位は、別の職種にチャレンジしたい(22%)であり、人間関係が悪い(21%)、家庭の事情(同率)と続く一方、「会社には伝えなかった本当の退職理由」の一位は、「人間関係が悪い」が実に約半数にも上る46%と断トツの比率で挙がっています。給与面や将来性あるいは人事評価に関する不満もあるけれども、何よりも人間関係が良好ではなかった点が、退職を決意した一番の理由ということです。リテンションマネジメントにおいても、成功の秘訣の一つは職場でのコミュニケーションを活性化させることですから、改めて、よい人間関係(活発なコミュニケーション)と悪い人間関係について考えてみることも大切です。

よりよいコミュニケーションを維持するためには、院長の取り組み姿勢が最重要であるとはいえ、院長一人の力で構築できるものではありません。コミュニケーションを深めようと働きかける横で、先輩職員が後輩職員をパワハラ寸前まで追い込む姿も見受けられます。よい人間関係とは何か、人間関係が悪いとは?について、スタッフとともに医院全体で話し合ってみることは、職場に対する当事者意識が芽生える一つの要素です。


デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮 氏